西のほう

逃げてどこいってたかというと西のほう

店長のばばーちゃんにあんた愛嬌あるね!と褒められた。

店長のおかーさんに、こんな生きてるだけの息子でいいんですか?と苦笑いされ

店長のおとーさんは店長そっくりで、こーいう人の良さが全面に出たおっちゃんになってくんやろうなぁ。と。

店長のにーちゃんは姫に似てた。アイドル顔。
でも目の下の皺の入り方と鼻のデカさは店長そっくり。


会った人みんなに、九州の子みたいやねぇと言われた。
自他共に認める俺の方言力。
方言を使える状況だと、俺人見知りしない。
驚きの外面のよさ。思わぬ才能を発掘!

まいちゃんありがとう!こんなところで役立ったよ!唐津弁。


店長はものすごくわかりやすく、家族に愛されていて、
本人からすると、押し付けがましいと感じるであろう、
その愛のわかりやすさに泣いた。

私も、ほしかったよ、そのわかりやすい愛。

ちなみに癌で死にそうな、じじーちゃんはイケメンだった。
じーちゃんイケメンやね、と言うと店長のとーちゃんが
イケメンよ!!あの爺さんはモテモテやったらしかよ。と言ってた。

俺のイケメンアンテナは瀕死のじじーちゃんすら感知するのだ!
節操なかー。

適齢期的な話を思いのほかバッサリと切り込んでくる店長のおかん。
そこは一身上のやんごとなき、思想と我が家の因縁となんたらかんたらあるので
とりあえずペンディング。だな。
神様関連の問題はヒジョーに難しい。

店長母からは、
どんな状況に置いても、自分が正しいと思ったことしかしない人独特の
芯の強さ、清潔さが感じられ、
その印象はうちの母にとても似ていた。
店長も似とるな思ってたがなーと鼻を膨らませながら言っていた。

逃走する前の1週間は、
体が重くて、視界が暗くて、歪んで
毎日、自分がいなくなった後の世界について考えた。

あまり思い残すことはないように思える。
このまま、日々に殺されながら生が続くのなら、
いっそ、と思った。

あそこまで沈んだのに、底には触らなかった。
それを考えると恐ろしい。

いつか、底に触れてしまうのだろうか。

西のほうに行って、少し命をつなげて帰ってきた。

私は世界を愛したいのだ。
愛したくて愛したくて、でも割り切らないと分に合わないから
割り切ろうとして、割り切ろうとする、自分の不実に傷つく。


押し付けがましい、わかりやすい愛。
与えられなかったものは、与えることで体得すべし。

ばかやろう。愛させろ、ばかやろう。